英語力だけでは足りない!
国際ビジネスの拡大に不可欠なグローバルコミュニケーションスキルと伸ばし方~

相手との信頼関係を築く「総合的なコミュニケーションスキル」とは
グローバル化が進む現代のビジネス環境では、英語力は重要なスキルの一つです。しかし、英語を話せるだけでは、国際ビジネスの場で成功するのは難しいのが現実です。異文化を理解し、的確に意図を伝え、相手との信頼関係を築く「総合的なコミュニケーションスキル」が不可欠です。本記事では、英語力だけでは足りない理由を掘り下げ、国際ビジネスの現場で役立つ具体的なスキルとその伸ばし方について詳しく解説します。
1. はじめに:なぜ英語力だけでは足りないのか?
グローバル市場における競争の激化
現代のビジネス環境では、企業は国内市場に留まらず、海外展開を視野に入れることが不可欠です。グローバル市場では競争が激化しており、国際的な競争力を持つ企業が生き残る時代となっています。
近年、テクノロジーの進化や貿易の自由化により、企業の競争環境は劇的に変化しています。かつては国内市場で安定したシェアを確保していれば成長できましたが、今では海外企業が日本市場に進出するケースも増えています。例えば、アジア諸国の企業が低コストかつ高品質な製品を提供し、日本企業と直接競争する状況が生まれています。
また、企業のグローバル化は、単に市場の拡大にとどまらず、サプライチェーンの多国籍化や海外の優秀な人材の確保など、多岐にわたる要素を含んでいます。そのため、単に自社の商品やサービスを英語で売り込むだけではなく、異文化環境での交渉やパートナーシップの構築が求められるのです。
さらに、競争が激しいグローバル市場では、迅速な意思決定や柔軟な対応が不可欠です。海外の取引先や顧客とスムーズにコミュニケーションをとり、信頼関係を構築するためには、高度な英語力とともにグローバルコミュニケーションスキルの向上が不可欠となります。
グローバルビジネス環境の変化と多様性の拡大
近年、ビジネスの国際化が加速し、多国籍企業やリモートワークの普及により、異文化間のコミュニケーションが日常化しています。英語は共通言語として重要ですが、それだけでは異なる文化背景を持つ人々と円滑に仕事を進めるのは困難です。相手の価値観や慣習を理解し、適切に対応できるかが、成功のカギを握ります。
言語の壁を超えた「真のコミュニケーション力」が求められる
ビジネスの場では、英語が話せること自体は特別な強みではなくなりました。重要なのは、英語を使ってどれだけ効果的にコミュニケーションができるか、そしてビジネスを成功に導けるかという点です。
英語が話せることは、国際ビジネスにおいて基本的な要件であることは疑う余地がありません。しかし、英語力があるだけでは実際のビジネス現場で十分な成果を上げることはできません。その理由は、英語はあくまで「ツール」に過ぎず、効果的なコミュニケーションや交渉には別のスキルが必要だからです。
例えば、英語が堪能でも、相手の文化的背景を理解せずに発言すると、意図が正しく伝わらないことがあります。欧米のビジネスパーソンは論理的かつ簡潔な表現を好みますが、日本人のビジネススタイルは相手を尊重しながら慎重に言葉を選ぶ傾向があります。こうした違いを理解していないと、相手に誤解を与えたり、信頼関係を築けなかったりする可能性があります。
また、英語での会話がスムーズでも、プレゼンテーションや交渉の場で説得力のある主張を展開できなければ、ビジネスの成功にはつながりません。単に英語を流暢に話すのではなく、「どのように伝えれば相手が納得し、行動に移してくれるか」を考えるスキルが重要になります。
したがって、国際ビジネスで成功するためには、単なる英語力ではなく、論理的思考力、異文化対応力、交渉スキルといった“+α”となるグローバルコミュニケーションスキルが不可欠なのです。
2. 企業内人材育成の課題:語学研修の限界と人材育成の方向性
企業内語学研修の現状と課題
企業が語学研修に期待する役割とは?
多くの企業は、従業員の語学力向上を目的とし、ビジネス英語研修や海外赴任者向けの語学研修を導入しています。特に、グローバル展開を進める企業では、語学力を「海外市場での成功」「国際的な取引の円滑化」「多様な人材との円滑なコミュニケーション」のための必須スキルと位置付けています。しかし、研修の内容や方法によっては、従業員の実践力を十分に伸ばすことができないという課題も浮かび上がっています。
語学研修の限界:スキルの定着と実践の壁
企業内語学研修の主な課題として、以下の3点が挙げられます。
- 1. 実践の場が不足している
- 学んだスキルを業務に応用する機会が少ない。
- 実際のビジネスシーンで使用する機会が限られ、スキルが定着しにくい。
- 2. 学習の継続が困難
- 忙しい業務の中で、研修が一時的なものになりやすい。
- 一定期間の研修後、フォローアップが不十分でスキルが低下する。
- 3. 語学スキルだけではグローバルビジネスで十分ではない
- 語学力が高くても、異文化理解や交渉スキルが不足していると、ビジネスで成果を上げることが難しい。
企業内語学研修には多くの期待が寄せられていますが、学習の継続や実践の場の不足といった課題もあります。特に、語学スキルだけではグローバルビジネスで十分な成果を上げることが難しく、より総合的な能力開発が求められています。
多くの企業では、社員の英語力向上のためにTOEICやビジネス英会話研修を実施しています。昨今ではAI英会話ツールの台頭などにより、英語学習に取り組みやすい環境が整えられてきています。しかし、これらの研修の多くは 「語学力の向上」に重点を置いており、実際のビジネス現場で求められるスキルをカバーできていない のが現状です。例えば、海外の取引先と交渉を行う場面では、単に英語を話せるだけではなく、交渉戦略や説得力のあるプレゼンテーション、文化の違いを考慮した対応が求められます。
3. 国際ビジネスで求められる英語コミュニケーション力とは?
国際ビジネスの現場では、英語は単なる言語スキルではなく、異文化環境で円滑に意思疎通を図るための「コミュニケーションツール」としての役割を持ちます。ビジネスで成果を出すためには、単に英語を話せること以上に、 「相手との信頼関係を築き、適切なメッセージを伝え、ビジネスをスムーズに進める力」 が求められます。これを 「英語コミュニケーション力」 と呼びます。
以下の3つの要素が、国際ビジネスで求められる英語コミュニケーション力の核となります。
1) 言語運用能力(Linguistic Proficiency)
英語コミュニケーション力の土台となるのが、言語そのものを適切に使う力です。ただし、「正しい文法を使う」「発音を完璧にする」といったこと以上に、 「相手に伝わる英語を使うこと」 が重要になります。
① 伝わるシンプルな英語
国際ビジネスでは、多国籍の人々が英語を使うため、 シンプルでわかりやすい表現 が求められます。難しい単語や長い文章を使うよりも、短く明確な文章を意識することで、スムーズな意思疎通が可能になります。
- 例:
- ✖ We would like to initiate a discussion regarding the potential expansion of our partnership.
- 〇 Let’s discuss how we can expand our partnership.
② ビジネスシーンに応じた英語の使い分け
会議、交渉、プレゼン、メール、レポート作成など、ビジネスの場面ごとに適切な英語の使い方が異なります。たとえば、会議では論理的に意見を述べる力が必要ですが、交渉では相手を説得する表現が重要になります。
-
例:(会議での意見の述べ方)
- I agree with your point, but I’d like to add another perspective.
(あなたの意見に賛成ですが、別の視点も加えたいです。)
-
例:(会議での意見の述べ方)
- I agree with your point, but I’d like to add another perspective.
(あなたの意見に賛成ですが、別の視点も加えたいです。)
-
例(交渉での提案の仕方)
- We propose a 10% discount for orders over 1,000 units.
(1,000個以上の注文には10%の割引を提案します。)
-
例(プレゼンの導入)
- Today, I’d like to introduce our new strategy for market expansion.
(本日は、新しい市場拡大戦略についてご紹介します。)
2) 異文化理解力(Cultural Intelligence)
英語を話す相手は、多様な文化的背景を持っています。したがって、 「英語が通じても、意図が正しく伝わらない」 ということが起こり得ます。そのため、異文化に適応する力(Cultural Intelligence)が求められます。
① コミュニケーションスタイルの違い
文化によって、話し方や意思決定の仕方が大きく異なります。例えば、アメリカでは 「結論を先に述べる」 ことが好まれますが、日本では 「前提を説明してから結論を出す」 ことが一般的です。この違いを理解し、相手に合わせた伝え方をすることが重要です。
- 例:
-
アメリカ式: "We need to increase our budget by 20% to meet our goals."
(目標達成のために、予算を20%増やす必要があります。) -
日本式: "Our sales have been increasing, but due to rising costs, we may need to consider a 20% budget increase."
(売上は伸びていますが、コストの増加により、予算を20%増やすことを検討する必要があるかもしれません。)
② 直接的な表現 vs. 間接的な表現
- 欧米では 「直接的な表現」 が好まれます。(例:「I disagree with you.」)
- 日本やアジアでは 「間接的な表現」 が多く使われます。(例:「That’s an interesting idea, but we may need to consider other options.」)
このような違いを理解し、相手の文化に応じた適切な表現を選ぶことが大切です。
3) 対人スキル(Interpersonal Skills)
国際ビジネスの成功には、相手との信頼関係を築くことが欠かせません。そのためには、 共感力(Empathy) や DEI(Diversity, Equity, Inclusion) の理解が重要になります。
① 共感力(Empathy)
相手の立場に立って考え、適切に対応する力が求められます。特に、異なるバックグラウンドを持つ相手に対して、 「あなたの意見を尊重しています」 という姿勢を示すことで、スムーズな関係を築くことができます。
- 共感を示す表現例
- "I understand your concern. Let’s find a solution together."
(あなたの懸念は理解しています。一緒に解決策を見つけましょう。)
② DEI(Diversity, Equity & Inclusion)の視点
多様な価値観や考え方を受け入れ、公平な環境を作ることが、グローバルビジネスでは不可欠です。例えば、多国籍チームでは、誰もが発言しやすい環境を作ることが求められます。
- 実践例
- 会議で積極的に 全員の意見を聞く
- 文化的な違いを尊重し、否定せずに受け入れる姿勢を持つ
- 相手の価値観を理解するために、質問をする("Could you tell me more about how decisions are made in your company?")
まとめ
国際ビジネスにおける英語コミュニケーション力とは、単に英語を話す能力ではなく、 「英語をツールとして使い、異文化の相手と信頼関係を築きながらビジネスを進める力」 です。そのために、以下の3つの要素を意識することが重要です。
- 1. 言語運用能力(Linguistic Proficiency)
- シンプルで伝わる英語を使う
- ビジネスシーンに応じた適切な表現を習得する
- 2. 異文化理解力(Cultural Intelligence)
- 文化ごとのコミュニケーションスタイルの違いを理解する
- 直接的・間接的な表現を適切に使い分ける
- 3. 対人スキル(Interpersonal Skills)
- 共感力を持って相手の意見を尊重する
- 多様性を理解し、異なる価値観を受け入れる
これらのスキルを意識しながら、英語を使ったビジネスコミュニケーションを実践することで、国際的な環境でも良好な関係構築へとつながります。
4.企業が目指すべき人材育成の新しい方向性
テクノロジーの進化、グローバル化の加速、多様性(Diversity, Equity & Inclusion:DEI)の重要性の高まりなどの環境変化に適応し、持続的な成長を遂げるためには、従来の「英語習得中心」の語学プログラムから、「英語でのコミュニケーション力を備える人材育成」へとシフトしていくことが求められます。
グローバルビジネスパーソンの土台として、「国際ビジネスで不可欠なグローバルコミュニケーションスキル」を備え、英語力を強力なツールとして使いこなす人材を育成するための、研修設計が重要な鍵となります。さらに、従来の「スキル習得中心」の人材育成から脱却し、 個々の社員が主体的に学び、変化に対応できる力を養う ことが求められます。
このような環境変化の中で求められるのは、単なる英語スキルの向上ではなく、「グローバルな視野を持ち、多様な文化・価値観を理解し、適応できる人材」の育成です。企業の成長を支えるためには、次の3つの視点を軸にした人材育成戦略が不可欠となります。
1. グローバルコミュニケーションスキルの強化
単に英語を話せることが目的ではなく、異文化間での効果的なコミュニケーションを可能にするスキルの強化。
2. 自律的な学習姿勢の醸成
従来の「知識やスキルを与えられる研修」から、「個々の社員が主体的に学び、実践しながら成長する研修」へとシフトすることが重要です。
- コーチング型研修による学びの定着
- 実践的なケーススタディを活用した問題解決型学習の導入
3. DEI(Diversity, Equity & Inclusion)の視点を取り入れたリーダーシップ開発
多様性を活かし、イノベーションを生み出す組織を構築するには、管理職だけでなく、社員一人ひとりがインクルーシブなマインドセットを持つことが求められます。これを実現するために、
- 多様な価値観を尊重し、一人ひとりを活かすインクルーシブコミュニケーション力
- 心理的安全性の確保とエンゲージメント向上に焦点を当てた研修の導入
- 次世代リーダー育成プログラムの開発
これからの人材育成の方向性
これらの要素を統合し、企業は「英語力を活かしたグローバルコミュニケーション能力」「自律的に学ぶ力」「インクルーシブリーダーシップ」を兼ね備えた人材育成プログラムを構築することが求められます。従来の研修にとどまらず、企業文化や制度の変革と連携させることで、真にグローバルな人材育成を実現することができるでしょう。
私たちフェニックスコンサルティングでは、国内大手企業、中小企業、外資系企業、高等教育機関において様々なサポートをご提供しています。
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